法定三帳簿の様式・保存期間・電子保存要件|社労士の顧問先帳簿整備ガイド【2026年版】
お役立ち情報

法定三帳簿の様式・保存期間・電子保存要件|社労士の顧問先帳簿整備ガイド【2026年版】

2026年8月7日25分で読める

この記事の結論

法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)は所定様式で必須記載事項を満たして作成し、保存期間は原則5年・当分の間は経過措置で3年、一定要件を満たせば電子保存も可能で、社労士は顧問先ごとに整備状況と保存期間の起算日を台帳管理するのが実務の要点です。

顧問先の労務管理を預かる社労士にとって、法定三帳簿の整備は「作って終わり」ではありません。様式や記載事項の不足、保存期間の起算日の取り違え、電子保存の要件不備は、労働基準監督署の調査で真っ先に確認される定番の指摘ポイントです。しかも三帳簿は保存期間の起算日が帳簿ごとに異なり、顧問先が増えるほど「どの会社のどの帳簿がいつまで保存必要か」が見えにくくなります。この記事では、法定三帳簿の様式・記載事項・保存期間・起算日・電子保存要件を早見表で整理し、社労士が顧問先横断で帳簿整備を先回り管理する実務までを解説します。

法定三帳簿とは(定義と早見表)

法定三帳簿の定義と根拠法令

法定三帳簿とは、労働基準法で作成・保存が義務づけられた「労働者名簿・賃金台帳・出勤簿」の総称です(出典: 厚生労働省 沖縄労働局「労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう」)。作成義務は、労働者名簿が労働基準法第107条、賃金台帳が同法第108条に定められています。出勤簿は単独の作成義務条文を持たず、労働時間の適正把握の観点および同法第109条の「その他労働関係に関する重要な書類」として作成・保存が求められます(出典: 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」)。いずれも事業場ごとに備え付け、パート・アルバイトを含む労働者ごとに整えるのが原則です。

【早見表】三帳簿の様式番号・必須記載事項・保存期間の一覧

法定三帳簿の様式・記載事項・保存期間 早見表
法定三帳簿の様式・記載事項・保存期間 早見表

三帳簿は様式・記載事項・保存期間の起算日が異なります。全体像を1表で押さえましょう。

帳簿主な根拠様式主な記載事項起算日
労働者名簿労基法107条様式第19号(施行規則53条関係)氏名・生年月日・性別・住所・履歴・業務の種類・雇入/退職/死亡の年月日と事由死亡・退職・解雇の日
賃金台帳労基法108条様式第20号(日々雇い入れは21号)賃金計算期間・労働日数・労働時間数・賃金の種類別の額・控除額最後の記入をした日
出勤簿等労基法109条(その他重要書類)法定様式なし出勤日・労働日数・始業終業時刻・労働時間数その完結の日

保存期間はいずれも原則5年、当分の間は経過措置で3年です。様式第19号・第20号は労働基準法施行規則の法定様式ですが、法定の記載事項をすべて満たせば独自様式やシステム帳票でも差し支えありません(出典: 厚生労働省 沖縄労働局)。

各帳簿の様式と必須記載事項

労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の様式と記載事項マップ
労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の様式と記載事項マップ

労働者名簿の様式(様式第19号)と記載項目

労働者名簿は、労働基準法施行規則の様式第19号(第53条関係)が法定様式です(出典: 厚生労働省 沖縄労働局)。記載項目は、労働基準法第107条が定める氏名・生年月日・履歴に加え、施行規則で定める性別・住所・従事する業務の種類・雇入れの年月日・退職の年月日およびその事由・死亡の年月日およびその原因です。これらに漏れがなければ、自社様式やシステム帳票で作成しても差し支えありません。実務でつまずきやすいのは、配置転換で「従事する業務の種類」が変わったときの更新漏れです。変更が生じたつど遅滞なく訂正し、退職・解雇時には退職年月日と事由を追記しておきましょう。

賃金台帳の様式(様式第20号)と記載事項

賃金台帳は、労働基準法施行規則の様式第20号(第55条関係)が法定様式で、日々雇い入れられる労働者については様式第21号があります(出典: 厚生労働省 沖縄労働局)。法定の記載事項に漏れがなければ、これら以外の様式で作成しても差し支えありません。記載事項は労働基準法第108条に基づき賃金計算の基礎を明らかにするもので、実務上は賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外や休日深夜労働の時間数・基本給や各種手当の額・控除額などを記録します。給与計算ソフトの出力帳票を用いる場合も、法定の記載事項の欠けがないかはソフト任せにせず確認が必要です。保存期間の起算日は「最後の記入をした日」です。

出勤簿の記載事項と労働時間の適正把握義務

出勤簿は、労働者名簿・賃金台帳のような固有の法定様式や単独の作成義務条文を持たない帳簿です。労働基準法第109条の「その他労働関係に関する重要な書類」に含まれ、使用者の労働時間の適正把握義務の記録としても整備が求められます(出典: 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」)。記録内容は出勤日・労働日数・始業終業の時刻・休憩時間・時間外や休日労働の時間数などで、賃金台帳の労働時間数と突き合わせる基礎データです。把握はタイムカードやパソコンの使用記録など客観的な方法が原則です。法定様式番号がないぶん、様式よりも「客観的な記録が労働者ごとに継続して残っているか」が是正のポイントになります。

保存期間と起算日(労基法改正対応)

法定三帳簿の保存期間(原則5年・経過措置3年)と帳簿別の起算日
法定三帳簿の保存期間(原則5年・経過措置3年)と帳簿別の起算日

保存期間は原則5年・経過措置で当分の間3年

法定三帳簿を含む労働基準法第109条の対象記録の保存期間は、原則5年です。2020年(令和2年)4月1日施行の労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)で、従来の3年から5年に延長されました(出典: 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」)。ただし当分の間は経過措置として、労働基準法第143条により「五年間」を「三年間」と読み替えるため、実務上の保存期間は3年とされています。「当分の間」がいつ終わるかは法律上明示されておらず、5年へ完全移行する期日は定められていません。安全策としては、3年を最低ラインとしつつ5年間保存しておく運用が無難です。

帳簿別の起算日の考え方(退職日・最終記入日・完結日)

保存期間は「いつから数え始めるか」で満了日が変わります。起算日は労働基準法施行規則第56条により帳簿ごとに定められ、労働者名簿は労働者の死亡・退職・解雇の日、賃金台帳は最後の記入をした日、出勤簿など賃金その他労働関係に関する重要な書類はその完結の日が起算日です(出典: 労働基準法施行規則第56条)。つまり在職中の労働者名簿はカウントが始まらず、退職等の時点から起算します。さらに賃金台帳や賃金に関する書類は、その記録に係る賃金の支払期日が完結の日より遅い場合、当該支払期日が起算日になります(出典: 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」)。この特例は賃金関係の書類に適用されるもので、労働者名簿の起算日には及びません。

電子保存の要件と是正ポイント

法定三帳簿を電子保存できる要件チェックリスト
法定三帳簿を電子保存できる要件チェックリスト

電子保存が認められる要件

法定三帳簿は、一定の要件を満たせば電子データ(電磁的記録)で保存できます。要件は、法令上の必要事項をすべて具備すること、明瞭に整理され必要に応じて直ちに必要事項を明らかにできること、労働基準監督官の求めに応じて遅滞なく書面へ表示・出力できるシステムであること、などです(出典: 厚生労働省)。この電磁的記録による保存は、e-文書法の施行に伴う整備の一環として認められたもので、根拠は平成17年3月31日付の通達(基発第0331014号)とされます。紙に出力して保管し続ける必要はなく、労務管理システムやクラウド上で保持しても要件を満たせば問題ありません。逆に、必要事項の欠落や出力不能があれば要件を満たさないため、「監督官の求めに直ちに応じて出力できるか」を基準に点検しておきましょう。

電子保存でよくある不備と監督署対応の是正ポイント

電子保存で監督署から指摘されやすい不備には型があります。第一に、給与計算ソフトや勤怠システムに記録はあるものの、法定の記載事項(賃金台帳の労働時間数、労働者名簿の従事する業務の種類など)が出力帳票から欠落しているケース。第二に、退職者データをシステム更新の際に削除・上書きし、保存期間の途中でさかのぼれなくなるケース。第三に、アクセス権限やバックアップが未整理で、監督官の求めに「直ちに」出力できないケースです。是正では、帳簿別に記載事項の充足を棚卸しし、退職者データの保存期限(起算日+保存年数)を明確化したうえで、いつでも書面出力できる運用を整えます。

社労士が顧問先の帳簿整備を効率化する実務

顧問先別 帳簿整備状況台帳と保存期限アラートの運用イメージ
顧問先別 帳簿整備状況台帳と保存期限アラートの運用イメージ

顧問先からの帳簿元データ回収ワークフローの設計

顧問先の帳簿整備で最初のボトルネックになりやすいのが元データの回収です。労働者名簿の変更情報、賃金台帳のもとになる給与データ、出勤簿・タイムカードは顧問先ごとに保管形式がばらばらで、メールやFAX・紙のやりとりに依存すると、誰から何を受け取ったかが担当者の記憶に埋もれます。そこで、必要な帳簿元データを一括依頼し、提出状況を可視化して未提出を自動リマインドする回収の仕組み化が有効です。回収資料を顧問先・案件に紐づけて保管すれば、監督署対応のときに探し回らずに済みます。電子申請はe-Govや既存ソフトで行い、回収と保管の管理を分けて担うのが現実的です。回収実務の進め方は出勤簿・賃金台帳の回収ワークフローで整理しています。

保存期間の起算日アラートと整備状況台帳での顧問先横断管理

もう一つ重要なのが、保存期間の起算日と保存期限の管理です。三帳簿は起算日が帳簿ごとに異なり、退職や最終記入の時点からカウントが始まるため、顧問先と対象者が増えるほどExcel台帳では追い切れなくなります。実務では、顧問先別に「様式の改定日・帳簿ごとの起算日・保存期限・電子保存の可否」を一覧化した整備状況台帳を持ち、保存期限が近づいた帳簿を自動アラートで検知できると、廃棄しすぎ・保存漏れの両方を防げます。社労士HUBは顧問先・案件・期限・書類の管理に特化したクラウドで、e-Gov電子申請や給与計算は行わず既存ソフトと併用する前提です。申請の前後の帳簿整備・保存・是正を顧問先横断で見える化できます。電子申請の手順は社労士のe-Gov電子申請のやり方を参照してください。

よくある質問

法定三帳簿とは何ですか?

労働基準法で作成・保存が義務づけられた「労働者名簿・賃金台帳・出勤簿」の総称です。作成義務は労働者名簿が労働基準法第107条、賃金台帳が同法第108条に定められ、出勤簿は単独の作成義務条文を持たず、労働時間の適正把握の観点および同法第109条の「その他労働関係に関する重要な書類」として作成・保存が求められます(出典: 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」・厚生労働省 沖縄労働局)。

法定三帳簿の保存期間は何年ですか?

労働基準法第109条により原則5年ですが、当分の間は経過措置(労働基準法第143条)で3年とされています。この5年への延長は2020年4月1日施行の改正によるもので、経過措置がいつ終わるかは法律上明示されていません。起算日は帳簿ごとに異なります(出典: 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」・労働基準法施行規則第56条)。

労働者名簿と賃金台帳の様式番号は決まっていますか?

労働者名簿は様式第19号、賃金台帳は様式第20号(日々雇い入れられる者は様式第21号)が労働基準法施行規則で定められています。ただし法定の記載事項をすべて満たしていれば、これらの様式以外の独自様式やシステム帳票で作成しても差し支えありません(出典: 厚生労働省 沖縄労働局)。

法定三帳簿は電子データで保存してもよいですか?

必要事項を具備し、明瞭に整理され、労働基準監督官の求めに応じて直ちに必要事項を書面へ表示・出力できる等の要件を満たせば、電磁的記録による保存が認められます(出典: 厚生労働省)。根拠は平成17年3月31日付の通達(基発第0331014号)とされ、労務管理システムやクラウドでの保存も要件を満たせば可能です。

三帳簿を1つのシステムで一元管理してもよいですか?

各帳簿の法定記載事項をすべて満たしていれば、様式を統合したり1つのシステムで管理したりして差し支えありません。ただし保存期間の起算日は労働者名簿・賃金台帳・出勤簿で異なるため、システム上でも帳簿ごとに保存期限を管理する必要があります。

まとめ

法定三帳簿は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を所定の様式と記載事項で作成し、原則5年・当分の間は経過措置で3年保存する帳簿です。様式は労働者名簿が様式第19号、賃金台帳が様式第20号(日々雇い入れは様式第21号)ですが、法定の記載事項を満たせば独自様式でも差し支えありません。起算日は帳簿ごとに異なり、電子保存も要件を満たせば認められます。社労士にとっては、顧問先ごとに様式・記載事項・起算日・保存期限を台帳で横断管理し、監督署対応を先回りできる状態にしておくことが要点です。


顧問先の帳簿整備を台帳で横断管理

社労士HUBは顧問先・案件・期限・書類の管理に特化したクラウドです。e-Gov電子申請や給与計算は行わず既存ソフトと併用しながら、帳簿の起算日・保存期限や整備状況を顧問先横断で見える化します。月額¥4,980/名(税込・6名以上¥2,980/名)、初期¥30,000(税込)。

資料請求・無料で製品体験 →

補足: 「法定三帳簿 整備状況チェックリスト&顧問先別 保存期間管理台帳テンプレ」を無料でダウンロードでき、顧問先ごとの様式改定日・起算日・保存期限を一覧化する第一歩に使えます。

関連記事

まずは無料で製品を体験してください

顧問先・案件・期限管理から書類回収まで、これ1つで。月額2,980円から。

関連記事