社会保険の適用拡大|106万円の壁撤廃に備える顧問先対応の工程
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社会保険の適用拡大|106万円の壁撤廃に備える顧問先対応の工程

2026年8月14日24分で読める

この記事の結論

社会保険の適用拡大への備えは、2027年10月から段階的に撤廃される企業規模要件と、公布から3年以内に撤廃される賃金要件の2軸に分けて、顧問先ごとに対象候補者と準備工程を洗い出すのが実務の要点です。(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)

社会保険の適用拡大では、「106万円の壁」という通称だけで開始時期を判断すると、顧問先への説明や対象候補者の抽出を誤ります。2026年10月から始まるのは新たな加入拡大の対象となる方への支援策であり、賃金要件の撤廃そのものではありません(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)。

社労士事務所は、要件ごとの改正時期を分けたうえで、顧問先の規模、従業員の契約・勤務情報、説明状況、必要書類、資格取得後の確認を一つの準備工程に落とし込む必要があります。この記事では、厚生労働省の「社会保険の加入対象の拡大について」と「年金制度改正法の主な改正内容」に基づき、制度の確定事項と実務上の管理項目を切り分けます。

106万円の壁撤廃と社会保険適用拡大の要点

賃金要件と企業規模要件の異なる撤廃時期を並べた社会保険適用拡大の全体図
賃金要件と企業規模要件の異なる撤廃時期を並べた社会保険適用拡大の全体図

適用拡大の予定は、一つの日付では管理できません。賃金要件、企業規模要件、対象候補者への支援策を別々の行に置き、それぞれの根拠と確認日を残すと、顧問先へ誤った開始時期を案内しにくくなります。

賃金要件と企業規模要件の撤廃時期を分けて確認する

賃金要件と企業規模要件は、撤廃の条件と時期が異なる別の加入要件です。月額8.8万円、年収106万円相当とされる賃金要件の撤廃時期は決まっておらず、全国の最低賃金が1,016円以上となる状況を見極め、法律の公布(2025年6月)から3年以内に廃止するとされています(出典: 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」、厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)。

企業規模要件は、事業所の規模に応じて段階的に撤廃されます。対象候補者を管理する際は、「壁がなくなる日」という単一の期限ではなく、顧問先がどの段階に該当するかを確認してください。

顧問先の企業規模企業規模要件が撤廃される時期事務所で行う準備
36人以上2027年10月から(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)対象候補者の抽出条件と説明時期を確定する
21人以上2029年10月から(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)顧問先台帳に準備開始時期を登録する
11人以上2032年10月から(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)契約・勤務情報の保持方法を標準化する
10人以下2035年10月から(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)将来の確認対象として台帳を更新する

現行と見直し後の確認項目を比較する

現行と見直し後の比較とは、過去の判定結果を流用せず、変更される要件と変更されない確認事項を分けることです。賃金要件の撤廃時期は未確定なので、予定日を先に登録せず、公式資料の確認担当と更新履歴を持たせます。

確認項目現時点の扱い見直し後に向けた管理根拠
賃金要件月額8.8万円・年収106万円相当を確認撤廃時期は未確定として公式資料の更新を確認厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
企業規模要件顧問先の現行の適用状況を確認規模別の段階時期に合わせて準備を開始厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」
従業員情報現行の適用要件と個別事実を照合契約・勤務情報を更新し候補者を再判定顧問先の雇用契約・勤務記録
2026年10月の対応加入拡大対象者への支援策の開始として確認賃金要件の撤廃日とは扱わない厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」

制度の変更予定と、個々の従業員が加入対象になるという判断は同じではありません。公表資料が更新されたときは、顧問先へ伝えた内容、判定に使った資料、確認日を更新し、通称や古い説明資料だけで結論を出さない運用が必要です。

顧問先ごとに対象候補者を抽出する

企業規模と従業員の契約・勤務情報を照合して対象候補者を抽出する流れ
企業規模と従業員の契約・勤務情報を照合して対象候補者を抽出する流れ

対象候補者の抽出は、従業員一覧に印を付けるだけの作業ではありません。顧問先単位の適用状況と従業員単位の事実を分け、何を確認済みで、誰への説明や資料回収が残っているかまで状態として管理します。

顧問先単位で適用条件を確認する

顧問先単位の確認とは、企業規模要件の段階と現在の適用状況を結び付ける作業です。顧問先台帳には、確認した企業規模、該当する段階、確認根拠、次回確認日を残し、制度施行に近づいてから一斉に調べ直す状態を避けます。

確認結果は、対象・対象外の二択だけにしません。「公式資料の更新待ち」「顧問先へ人数確認中」「候補者抽出へ進む」など次の行動が分かる状態を設けると、保留案件が埋もれません。制度変更の説明方法は、社労士と顧問先のコミュニケーション改善も参考に、説明日と相手方の確認結果まで記録してください。

従業員単位で契約・勤務情報をそろえる

顧問先・対象候補者・確認根拠・説明・必要書類・手続状況を一画面で追う準備ボード
顧問先・対象候補者・確認根拠・説明・必要書類・手続状況を一画面で追う準備ボード

従業員単位の確認とは、公式な適用要件と本人の契約・勤務の事実を照合することです。年収の見込みだけで決めず、雇用契約、勤務記録、現在の加入状況、顧問先からの回答をそろえ、根拠が不足する場合は未確認として差し戻します。

確認単位管理項目根拠・証拠状態次の行動
顧問先企業規模と適用状況顧問先台帳、公式資料の確認記録確認待ち・確認済み対象候補者の抽出
従業員契約・勤務情報雇用契約、勤務記録、顧問先回答不足・確認中・確定不足情報の依頼
説明制度変更と本人への影響説明内容、説明日、回答未説明・説明済み意向・質問の記録
必要書類資格取得に使う情報受領書類、確認記録未依頼・回収中・確認済み手続担当へ引渡し
手続後申請と設定の完了状況到達・受理記録、設定確認作業中・確認済み案件の完了確認

この準備ボードは、顧問先台帳、案件テンプレート、書類回収、期限・担当・進捗管理の実装項目に基づく独自編集です。制度上の対象者を自動判定するものではなく、事務所が確認した根拠と未完了作業を顧問先横断で再現するための管理設計です。

施行前の顧問先対応を工程化する

対象候補者の確認から説明・書類回収・資格取得・設定確認までの準備工程
対象候補者の確認から説明・書類回収・資格取得・設定確認までの準備工程

施行前対応は、制度の案内を送って終わりではありません。対象候補者の根拠確認、顧問先と本人への説明、必要書類の回収、資格取得、手続後の確認までを一件の案件としてつなげます。

説明・意思確認・必要書類回収を進める

説明と回収の工程は、対象候補者ごとに「説明前」「質問対応中」「書類依頼済み」「回収済み」を区別する運用です。顧問先には賃金要件と企業規模要件の時期が異なることを伝え、未確定の撤廃日を確定事項として案内しないよう、使用した資料名と確認日を共有します。

実務は次の順で進めると、確認の抜けを見つけやすくなります。

  1. 顧問先の企業規模と適用状況を確認する
  2. 従業員の契約・勤務情報から対象候補者を抽出する
  3. 顧問先と対象候補者へ変更内容を説明し、質問と回答を記録する
  4. 必要情報と書類を依頼し、受領内容を確認する
  5. 手続担当と確認者へ根拠・書類・期限を引き渡す

回収項目は候補者ごとに変わり得るため、固定の一覧だけで完了と判断しません。入退社手続きの必要書類と回収方法も参照し、利用する届書と現行の提出先案内に応じて依頼内容を確定してください。

資格取得手続きと給与設定確認を分担する

資格取得手続きと給与設定確認は、担当と完了証拠を分けて管理する工程です。船員被保険者を除く当然被保険者の厚生年金保険被保険者資格取得届は、事実があった日から5日以内に様式第7号で日本年金機構へ提出します(出典: 厚生年金保険法施行規則第15条)。健康保険側の期限や受付条件は加入先保険者の現行案内で別途確認してください。

資格取得の期限管理は社会保険・労働保険の届出期限早見表で起算点と提出先を再確認し、届書の作成・電子申請は既存の申請ソフトで行います。送信操作だけで完了にせず、到達・受理を確認した記録を案件へ戻すことで、未完了を判別できます。

給与設定は資格取得届とは別の作業として、給与計算の担当者が開始時期と設定結果を確認します。給与計算代行の業務フローを基に引継ぎ点を明確にし、算定基礎届の実務ガイドも含め、加入後に続く定例手続の担当を決めておくと案件の閉じ忘れを抑えられます。

社労士HUBと既存ソフトを併用する

案件・期限・書類回収と届書作成・電子申請・給与計算の役割を分けた併用図
案件・期限・書類回収と届書作成・電子申請・給与計算の役割を分けた併用図

適用拡大への準備では、対象候補者と必要書類を追う管理業務と、届書作成・電子申請・給与計算を行う実務を分けます。システムごとの完了条件を決めて相互に記録を戻せば、申請済みなのに案件が残る、設定確認前に完了扱いになるといったずれを防げます。

案件・期限・回収はHUB、申請・計算は既存ソフトに分ける

本サービスは、顧問先台帳、案件テンプレート、必要書類チェックリスト、ログイン不要のセキュアURLによる書類回収、担当・進捗・期限の共有を担います。資格取得届の作成、電子申請、給与計算、適用要件の法的判断は行わず、既存の申請ソフトと給与計算ソフトを使います。

両者をつなぐ情報は、対象者、確認根拠、必要書類、法令上の期限、担当、送信・受理、設定確認です。管理側から既存ソフトへ書類と期限を渡し、既存ソフト側の到達・受理や設定結果を案件へ戻すという受渡しを決めれば、乗り換えを前提にせず準備状況を一つの一覧で確認できます。

よくある質問

社会保険の適用拡大は、要件ごとに撤廃時期と判断根拠が異なります。顧問先や従業員へ回答する際は、通称だけで結論を伝えず、公表済みの制度日程と個別の事実を分けて説明してください。

106万円の壁の撤廃はいつからですか。

賃金要件(月額8.8万円・年収106万円相当)の撤廃時期は決まっていません。全国の最低賃金が1,016円以上となる状況を見極めたうえで、公布(2025年6月)から3年以内に廃止するとされています。一方、企業規模要件は36人以上が2027年10月から、21人以上が2029年10月、11人以上が2032年10月、10人以下が2035年10月と段階的に撤廃されます(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)。

2026年10月から始まるのは、新たな加入拡大の対象となる方への支援策です(出典: 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」)。賃金要件の撤廃日として案内せず、厚生労働省の最新資料で施行条件を確認してください。

どの従業員が社会保険の対象になりますか。

対象者は、判定時点の公式な適用要件と、従業員ごとの契約・勤務の事実を照合して確認します。企業規模だけ、または年収106万円という通称だけでは決めず、顧問先の適用状況と本人の雇用契約・勤務記録をそろえてください。

改正後の対象候補であっても、適用開始時期は企業規模要件の段階や賃金要件撤廃の確定時期によって異なります。確認した公式資料名、確認日、個別資料、判断者を残し、情報更新時に再判定できる状態にします。

社労士HUBで資格取得届の作成や給与計算ができますか。

できません。届書作成・電子申請・給与計算は既存ソフトを使い、本サービスは対象者、期限、必要書類、担当、完了状況を管理します。制度上の対象者判定や行政への届出も代行しません。

既存ソフトで手続きを終えたら、到達・受理の記録と給与設定の確認結果を案件へ戻します。役割と完了証拠を分けることで、現在の申請・計算環境を変えずに、準備から手続後までの進捗を共有できます。

まとめ|対象者と準備状況を顧問先横断で管理する

社会保険の適用拡大に備える要点は、賃金要件と企業規模要件の時期を分け、顧問先単位と従業員単位の確認を一つの工程につなぐことです。賃金要件の撤廃時期は未確定であり、企業規模要件は段階的に撤廃されるため、単一の日付や年収の通称だけで対象者を決めないでください。

対象候補者の抽出後は、説明、意思確認、必要書類回収、資格取得、到達・受理、給与設定確認までを担当と証拠付きで管理します。制度の判断と届書作成は公式資料・既存ソフトに委ね、案件管理側では根拠と未完了作業を顧問先横断で見える状態にすることが、施行直前の集中を避ける準備になります。


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